◎日本百高山の横顔

掲記「日本百高山の横顔」では、今まで撮り貯めた写真の中から違った表情を見せる数枚を抽出して掲載します。又その山に関する、簡単な紹介,エピソードなども記載します。写真は他のコンテンツで使用したものと重複する場合もありますがご容赦願いたい。又写真データのない場合は枚数の減少や割愛もあります。

◎標高1位=富士山(3773m)【2022,10,22】

言わずと知れた断トツの日本最高峰。どこから見てもその山容から山名を連想できる。夏は外国人も含め一般登山客で賑わうが、冬から春にかけても危険を伴うが魅力ある山である。近くでなくとも関東甲信地区からもその美しさを満喫できる。唱歌にも歌われ、日本で最も慕われている山である。厳冬期の富士山に登った事があるが、登山道は青氷と化しており、アイゼンの歯も半分ぐらいしか効かない。登りは何とかなるが下りが厳しい。慎重にジグザグに行動したが、非常に怖い思いをした記憶がある。

◎標高2位=北岳(3193m) 【2022,11,2】

南アルプス北部の最高峰として存在感を示しているのが、日本第二の高峰北岳である。急峻な岩峰は独特の山容を呈し、見るからに登頂意欲をそそられる。この山は比較的交通の便が良く、無雪期の各稜線から、バットレスの岩場から,又厳冬期池山吊り尾根から凍てつく岩稜を登った記憶がよみがえる。さすがに頂上からの眺望は素晴らしく、遠くに富士山を仰ぎ、周辺の高峰が全方位に展開している。岩場の下の縦走路には南アルプスでも有数な素晴らしいお花畑が広がり、登山者の目を楽しませてくれる。

◎標高3位=奥穂高岳(3190m)【2022,11,10】

岩場の殿堂穂高連峰の主峰、奥穂高岳が日本第三位の高峰である。奥穂高岳を分岐点にしてジャンダルムを経由して西穂高岳へ、吊り尾根を経由して前穂高岳に、涸沢岳を経由して北穂高岳へと、厳しい岩稜を経由しての縦走は注意を要するが楽しい。奥穂高岳頂上から見るジャンダルムは素晴らしく、本当に前衛峰として奥穂高岳を守っているように見える。特に西穂高岳~ジャンダルム~奥穂高岳続く岩稜尾根は魅力度の高い縦走路である。又上高地、河童橋から見る吊り尾根の眺めも迫力を感じる。

◎標高4位=間ノ岳(3189m)【022,11,17】

南アルプス北岳から南に続く3000mを越す稜線の奥に、どっしりと構えているのが間ノ岳である。なだらかな山容からは日本4位の高峰とは思えない。しかし頂上に立つと素晴らしい景観で遠く富士山を望み、南アルプスの名だたる高峰が周囲から迫る。ここは北岳へ、農鳥岳へそして塩見岳への分岐点でもある。何回もこの稜線を歩いたが、間岳から北岳に向かうと空中散歩の感があり、特に北岳に近づくとそそり立つ岩峰が印象深く、楽しい登山道である。

◎標高5位=槍ケ岳(3180m)【2022,11,24】

北アルプスで槍の穂先の様に天空を突き、誰もが間違えずにその名を言い当てるのが槍ケ岳ではなかろうか。山を志す者が登ってみたい山の筆頭で、燕岳から始まる表銀座、烏帽子岳から始まる裏銀座、更に穂高連峰へと続く大キレット、どの稜線も魅力いっぱいである。夏も素晴らしいが、冬の凍てつく稜線を必死でラッセルし、滑落すれば死に直結する青氷の急斜面を経て山頂に立った感動は今でも忘れられない。又、登山道は無いが北鎌尾根の踏破も楽しい。昔、湯股温泉経由で北鎌尾根の末端より槍ケ岳を目指したが、途中ビバークを強いられ、水不足に陥り、草の葉の露をすすりな登った経験がある。

◎標高6位=悪沢岳(3141m)【2022,12,1】

南アルプス荒川三山の中核をなす山で東岳とも呼ばれている。少し馴染みは薄いが、南アルプス南部の盟主赤石岳を標高で抜く。一般的には椹島から千枚岳を経て頂上に達するが、この一帯は南アルプス一、二を争う豊富な高山植物が多く、岩場に咲く色とりどりの花が縦走者の目を楽しませてくれる。山容が顕著に見えるのが、赤石岳を経て赤石小屋へと続く縦走路の見晴らし台である富士見平で、谷を隔ててその雄大な山塊を眺める事ができる。荒川三山はこの悪沢岳から荒川中岳、荒川前岳へと1時間半ほどで縦走できる。

◎標高7位=赤石岳(3120m)【2022,12,8】

南アルプス南部の盟主として君臨し、山体の一部を構成している赤色の岩石が山名の由来とも言われている。この山も幾度となく登っているが、百名山を狙っている頃、普通2日はかかる登頂日数を1日にしようと、当時は廃道になっていた小渋川を遡行して大聖寺平から登頂した。でも人影が全く無かったので小屋の管理人に聞くと、前週このルートで渡渉中流され死亡した登山者がいたとの事。この話には後日談があり登山者は犬を連れており、主人をなくした犬は数日間鳴き続けていたとか。赤石岳には椹島から前述の悪沢岳を経ての縦走であるが、更に聖岳に足を伸ばせば、奥深い南アルプスの真髄に触れられる。

◎標高8位=涸沢岳(3110m) 【2022,12,15】

奥穂岳山荘から見ると奥穂高岳と対峙しているのが涸沢岳である。秋の涸沢は素晴らしい三段紅葉で知られ、その奥に鎮座する涸沢岳の姿にも趣がある。涸沢岳から北穂高岳に向かうキレットは場所によって大キレットを凌駕している様に思える。昔、年末に新穂高温泉から白出沢沿いに伸びる夏道のない急峻な西尾根を、深い雪の中を懸命にラッセルして蒲田富士を経由し、涸沢岳にアタックした事があった。蒲田富士を過ぎると、遥か彼方の岩稜の奥に見える涸沢岳の雄姿は今も目に焼き付いている。天候の悪化で予定していた奥穂高岳までは行けなかったが、穂高連峰の稜線に立てて、一生の思い出となった。

◎標高9位=北穂高岳(3106m) 【2022,12,22】

穂高連峰から北に向かって槍ケ岳に伸びる岩稜は北穂高岳を過ぎると急激に落ち込んで大キレットを構成する。小生が登山を始めた頃は一級の難路で、縦走するにはそれなりの心構えが必要であった。でも今は登山道も整備され、ツアー客にも人気な縦走路となっている。これら急峻な山並みは奥穂高岳方面から見ても、また槍ケ岳方面から見ても絵になる絶景であり、素晴らしい写真のアングルとなっている。昔、北穂高小屋に居た時夕立があり、大きな爆発音を伴うが落雷があった。炊事場の鉄柱を稲妻が走るのを目の当たりにした事があり怖かった。涸沢から真後の鏡平から見た槍、穂高連峰の裏の姿も見事である。

◎標高10位=大喰岳(3101m)【2022,12,29】

槍ケ岳から穂高連峰に縦走する場合、最初に現れるピークが大喰岳である。さほど目立たない山であるが、槍ケ岳の稜線に近いだけあって標高はベストテンに入る。名の由来は昔この山で多くの動物たちが草木を食していた場所であったことから猟師の間で大喰と呼ばれたとの事。冬の槍ケ岳には飛騨沢を利用する他、この大喰岳西尾根を利用する登山客も多いようだ。若い頃の正月、横尾尾根を経由して槍ケ岳に登った時、天候不順で上高地でも雨だった。南岳~大喰岳~槍ケ岳の稜線は青氷で、登山中槍ケ岳や本稜線から毬の様に転げ落ちる滑落者を数名目にした。アイゼンは半分位しか効かなかった。当隊からも滑落者が出たが大事には至らなかった。

◎標高11位=前穂高岳(3090m)【2023,1,5】

穂高連峰の一翼をなし、前穂高岳~奥穂岳の吊り尾根は見事な景観をなす。又クライマー憧れの大岩壁屏、屏風岩から端を発し前穂高岳に続く岩稜は、北尾根と呼ばれ鋸の歯の如く天空に突き出ている。北尾根は5,6のコルから前穂高岳まで、初歩的登攀者の入門コースとして人気が高い。この四峰の横尾山荘側には著名な岩登りルートが何カ所かあり、過去に北条新村ルートを登った事がある。垂直に300m程落ち込むオーバーハングを友のザイルを信用して登攀しその後、前穂高岳~奥穂高岳を経由して涸沢に戻った。又餓鬼岳から黒部川に半島の様に突き出ている唐沢岳から雲海に浮かぶ、槍~穂高連峰、前穂高岳の鋭鋒は良く目立つ存在であり素晴らしい。

◎標高12位=中岳(3084m)【2023,1,12】

常念岳や笠ケ岳方面から槍ケ岳を眺めると、穂高連峰に向かいなだらかな大喰岳の横に有る鋭峰が中岳である。大きな独立峰でないため槍ケ岳の付属的な山とみなされ、日本百名山には選ばれていない。しかし日本百高山には認定されており、あまり目立たないが槍ケ岳連山の一角を形成し標高は上位をキープしている。夏期はあまり気をせずに通過してしまうが、厳冬期この稜線を通過すると、厳しい登下降を強いられる。槍ケ岳方面からこの山を経由して南岳を過ぎると眼下には鋭く落ち込んで穂高連峰に続く大キレットが待ち受ける。ここは危険であるが人気の高い岩稜縦走路である。

◎標高13位=荒川中岳(3083m)【 2023,1,19】

南アルプス荒川三山の中心にあり、悪沢岳から続く縦走路を塩見岳方面と赤石岳方面へと分ける。荒川中岳の少し先、荒川前岳の北西斜面は大崩壊を続けており、近い将来山頂自体の存続も危うい。荒川中岳から荒川小屋に下る広大な斜面は、南アルプス屈指の高山植物の宝庫である。登山道はお花畑の中を縦横に刻まれており、登山道脇には多くの高山植物が咲き乱れ、これを満喫しながらの歩行は疲れが吹っ飛ぶ。でも一時期、鹿による食害が広がり高山植物が見る影も無くなった時期があった。しかし関係者のご努力によってネット等で防御策の設置等を重ねた結果、植生は徐々に回復し、素晴らしいお花畑が見られるようになった。

◎標高14位=御岳山(3067m)【2023,1,26】

十年程前突然の水蒸気噴火により、大きな登山客が亡くなった痛ましい山岳遭難事故は記憶に新しい。北アルプスからは距離を置くどっしりとした独立峰で、山容も素晴らしい。又、御嶽山は山岳信仰の山としての歴史が深く、特に江戸時代中頃以降、御嶽信仰として有名になり、○○講の名のもと、全国に広がったという。登山道の途中には信仰の山として銅像や山小屋が立ち並び、シーズンになると幾多の白装束の信者たちが、この山を拝した長い歴史があるという。1979年春にこの山を踏破しているが、頂上稜線は1つの山とは思えない広がりを見せ、大きな山である事を実感させてくれた。

◎標高15位=西農鳥岳(3051m)【2023,2,2】

南アルプスの3000mを越す主稜線、白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)の一角を占め、一番南側に位置している。ただ北岳~間ノ岳迄の登山客は多いが、塩見岳方面への縦走者が目立ち、農鳥岳への登山客は少なくなり知名度は落ちる。農鳥岳は2つのピークを持つが西農鳥岳の方が25m程高い。両山は対照的で西農鳥岳は岩稜帯で、農鳥岳は比較的なだらかな山容である。しかし日本百高山を目指す登山者は点線ルートを更に南下した先のある広河内岳、大籠岳、笹山を制覇しなければならない。更に稜線を進むと南アルプス全山が眺望できる笊ケ岳がある。2回程写真を撮りに行ったが素晴らしい展望である。登山口の雨畑からは急坂の連続で辟易した思い出がある。

◎標高16位=塩見岳(3047m)【2023,2,9】

南アルプスの中心部に位置し、独特の兜の風貌をした山として知られている。夏場は鳥倉林道までバスが入るので起点の三伏峠まで3時間位で登れる。殆どの登山者は塩見岳往復か、この峠~塩見岳~熊の平を経て北岳方面を目指す。しかし登山客は少ないが荒川三山から赤石岳や聖岳方面への縦走も楽しい。未だ体力のあった2008年の正月、単独で塩見岳の写真を撮りに出かけた。塩見小屋まで車で入り、ラッセルをしてやっと三伏峠の冬季小屋に辿り着いた。勿論、正月ここを訪れる登山客など皆無。極寒用のシュラフを持ち込んだが、寒さが尋常でなく眠れなかった思い出ある。しかし雪を纏った純白の塩見岳を存分に撮影できた。カモシカにも出会った。

◎標高17位=仙丈ケ岳(3033m)【2023,2,16】

白峰三山の稜線上から外れ、谷を隔てて独立峰を誇る仙丈ケ岳。北岳方面から見てもどっしりと風貌が感じられる大きな山塊である。普通は北沢峠を起点にして甲斐駒ケ岳と、この仙丈ケ岳を往復する登山客が多い。雪があり北沢峠までのバス便のない昔、戸台から戸台川に沿ってテント装備一式の重い荷物を、6時間以上かけて北沢峠まで担ぎ上げた辛い記憶がある。仙丈ケ岳から塩見岳~間ノ岳の縦走路分岐点である三峰岳に続く、長大な仙塩尾根の踏破が出来なかったのは誠に心残りある。又ここ仙丈ケ岳からは富士山と北岳、間ノ岳の日本第一、第二、第四の高峰が並んでみる事ができる景勝地でもある。

◎標高18位=南岳(3033m)【2023,2,23】

槍ケ岳から穂高連峰に向かって稜線を南下すると大喰岳、中岳を過ぎ丸みを帯びた平坦で平凡なピークが南岳である。ここを過ぎると登山道は急激に落ち込み、穂高連峰に続く大キレットを形成する。当初、屈指の難所とされ一般登山客からは敬遠されてきた。しかし縦走路はクサリ、足場等が整備され、今ではトレッキング客にも人気の縦走コースになっている。南岳から見る穂高連峰の岩の殿堂の景観は素晴らしく、中央に北穂高岳~奥穂高岳、左に前穂高岳の迫力ある岩稜が迫り、素晴らしく絵になる風景である。一般的に大キレットの通過は槍ケ岳方面からの方が安易とされ登山客も多い様だ。

◎標高19位=乗鞍岳(3026m)【2023,3,2】

この山も独立峰で、近くに御岳山があり、山容が異なるのですぐ見分けがつく。頂上近くまでスカイラインが通じており、最も簡単に登れる3000m峰と言える。しかし頂上まで自家用車では行けず、専用のシャトルバスに乗り換えての到着となる。頂上近くの雪田には夏でも雪が残り、夏スキーのメッカとしても有名である。バス終点の畳平から登ると車道歩きが多く、途中の「肩の小屋登山口」から登ると高山植物が多くみられ、違った雰囲気を楽しめるので辿って欲しい。頂上付近は晴天率が高く、天体観測に適しておりコロナ観測所等公共施設もある。帰りは畳平から始発のバスが便利である。

◎標高20位=大汝山(3015m)【2023,3,9】

室堂から見る立山連峰の景観は素晴らしい。又、みくりが池を前景にしても絵になる。屏風の様に立ちはだかる立山連峰の最高峰が大汝山で、剱、立山連峰の中で唯一3000mを越す標高である。雄山から剱岳に抜ける縦走路から少し外れるが、踏み跡はあるので登っておきたい山である。室堂から雄山までは登山客も多いが、剱岳方面に縦走する人はぐっと少なくなる。又立山は古くから信仰の山として知られ、富士山、白山と並び日本三霊山と言われている。大汝山の直ぐ横に聳える雄山では頂上に立派な社殿を持っているが、頂上を踏むに拝観料が取られるのは残念であるが仕方がない。子供の小さい頃一家4人で雄山に登った事を思い出した。

◎標高21位=聖岳(3013m)【2023,3,16】

南アルプスで赤石岳の横に並んで聳え、屋根型の独特な山容を持つ美しい山で、何か宗教的な雰囲気を感じさせる。日本アルプスの中で一番南に位置する3000m峰であると同時に、日本百高山21番目で最後の3000m峰である。深田久弥は著書で「私にとって長い間、取り残された山であった」と書いており、当時は奥深い山であったらしい。私は南アルプスでもこの山が好きで春夏秋冬、各方面から12回程登っている。特に印象に残っているのは正月の冬山登山で7座目の3000m越えを制覇し、厳しかったが達成感があった山である。又巨大な滝を持つ聖沢本谷遡行も経験したが、これが後に残雪期の5月、道に迷って聖沢本谷に迷い込んで時、九死に一生を得た手助けになるとは思ってもみなかった。

◎標高22位=剱岳(2999m)【2023,3,23】

言わずと知れた「岩の殿堂」として有名である。岩壁には幾筋もの登攀ルートが刻まれ、クライマーの憧れの場所である。一般登山道は剱沢からであるが、カニの横バイ、縦バイと言われる難所がある。早月尾根からも難易度は同程度である。私が初めてこの頂を踏んだのが1968年で、頂上には3003mの標高が記されていたが、今は2999mに変更されている。昔、5月単独で剱沢にヘイルホップ彗星を撮りに行った際、あまりにも天気が良かったので、単独で装備も完全でなく不安もあったが登頂を試みた。特に前剱の急峻な雪壁は厳しく必死で登った。雪が無かったのはカニの縦、横バイのみ。更に長く細い稜線を登り詰めると頂上。眼下に広がる剱沢や、遥かに見える立山三山は分厚い雪に埋もれ、ヨーロッパアルプスを見る様であった。

◎標高23位=水晶岳(2986m)【2023,3,30】

北アルプスの裏銀座縦走路からは外れおり、登山客は少なくなるが、日本百名山ハンターはここを目指す。黒い岩峰が印象的であり、別名黒岳とも言われている。昔ここで水晶を拾ったことで、山の由来を納得した事もある。この山を経由して稜線上を赤牛岳に進み、そこから2日かけて奥黒部ヒュッテ、黒部湖に続く読売新道は、北アルプスの中でも最深部の縦走路で、少し山を経験した登山者にとっては踏破したいと思う筆頭ではなかろうか。頂上から見る赤牛岳とその奥に聳える剱岳の姿は誠に印象的である。特に前進基地である水晶小屋は何度も強風によって壊れたが、再建され登山客に喜ばれている。

◎標高24位=甲斐駒ケ岳(2967m)【2023,4,6】

南アルプスの中では首都圏より近く登りやすい山である。一般的には北沢峠より多く登られる。でも首都圏からは何といっても、山梨県側の竹宇駒ケ岳神社からの黒戸尾根経由は登山口までのアプローチが短くベターである。しかし、登頂にやや時間がかかるのが玉にキズだが、一度は挑戦して欲しいルートである。このルートは冬、数回登っているが、年によって積雪量が大きく異なり、腹ラッセルも経験したことがある。正月の南アルプスの眺望は素晴らしく、北岳、間ノ岳、塩見岳等が雪のベールに包まれて美しく見える。又、夏に尾白川上流に位置し甲斐駒頂上に直接突き上げる黄蓮谷右股の遡行は、沢中1泊で200m越えの厳しいスラブもあるが楽しかった。

◎標高25位=木曽駒ケ岳(2956m)【2023,4,13】

標高25位は中央アルプスの最高峰、木曽駒ケ岳である。ここは昔から信仰の山であり、頂上に向け東西南北5カ所近い登山口がある。今は駒ケ岳ロープウエイが開通してから、年間を通じて誰でも簡単に登れるようになった。千畳敷カールから急坂を経て頂上稜線の上の出ると、木曽駒ケ岳の頂上にかけて大きな宿泊施設が並ぶ。頂上からの眺めは最高で、直前の宝剣岳から連なる中央アルプスの稜線の奥に、空木岳や南駒ケ岳が素晴しい。又稜線から少し外れるが花の山として有名な三ノ沢岳の三角錐の山容も美しい。厳冬期、千畳敷カールからラッセルをして宝剣岳に直登した時のことを思い出した。

◎標高26位=白馬岳(2932m)【2023,4,20】

北アルプスの入門コースとして知られ、登山客も多い。今ではやや減ったものの、大雪渓を蟻の行列の様に登る登山客の姿が、マスコミ等で良く紹介されたものだ。山の東側にはスキー場が点在し、リゾート地としても名高い。私が初めてアルプスに登ったのがこの山で、その後山の魅力に取りつかれ60年近くにわたり、苦楽を共にした趣味になるとは当時は思わなかった。初歩的な白馬三山の縦走の他、標高2932mの白馬岳山頂からから標高0mの日本海の親不知に抜ける栂海新道は、2日がかりで少し厳しいが高山植物の群生が登山道周辺を覆い、花好きな登山者にとっては、停滞して一日中でも花と戯れたくなる登山道である。

◎標高27位=薬師岳(2926m)【2023,4,27】

室堂から槍ケ岳に続く長大なダイヤモンド縦走路の中核をなし、大きくどっしりとした山容は何処から眺めても美しい。薬師岳は黒部渓谷を挟んで対峙する水晶岳や赤牛岳の稜線からが最高の眺めで、両翼を大きく広げたなだらかな頂上稜線は雄大かつ優雅で、山容は光線によって刻々と変化し見飽きる事はない。普通、太郎平小屋からのピストン登山が多い。昔、扇沢を一番のトロリーバスで出発し、室堂~五色ケ原~越中沢岳~スゴ乗越小屋で1泊、2日目は薬師岳~太郎平小屋~雲の平~三俣山荘まで飛ばし、3日目は水晶岳~赤牛岳~読売新道~奥黒部ヒュッテ~黒四ダムまで、最終のトロリーバスに乗るため、飛ばした事があったが、流石に疲れた。

◎標高28位=野口五郎岳(2924m)【2023,5,4】

烏帽子小屋から始まる本格的な裏銀座縦走路の中で、野口五郎岳は槍ケ岳に次ぐ標高(鷲羽岳より10cm高い)である。近くには野口五郎小屋があり、緊急避難場所としては有用である。昔このテント場で泊まった事があるが、夜中ガサガサうるさかった。朝起きてみると熊の仕業らしい事がわかった。テントから顔を出していたら負傷していたかもしれない。熊がこの稜線まで登って来るらしく、仕留められた熊の皮が干してあった。頂上稜線近くから高瀬川の湯股温泉に降りる、現在では唯一の竹村新道がある。一昨年この道を辿り途中の日本百高山である南真砂岳に行ったが歩く人は少なく登山道は荒廃していた。

◎標高29位=鷲羽岳(2924m)【2023,5,11】

北アルプスの中で最も奥深い山塊の一角を占め、特に三俣山荘から見るとその急峻な登りに嫌気がさすのがこの大きな山である。頂上からの眺めは最高で、槍ケ岳やそれに続く硫黄尾根、水晶岳から赤牛岳を経由して読売新道に向かう縦走路、表銀座や裏銀座の山々など360度の展望が最高である。又眼下には「鷲羽の目」と呼ばれる小さな火口湖があり、アクセントを増す。裏銀座縦走コースの中核を占め、縦走路は雲の平方面や黒部五郎岳、そして、槍ケ岳へと道が続く。又三俣山荘から見て鷲羽岳の急峻な登りに嫌気のさす人は、一旦黒部源流に下り、岩苔乗越から水晶岳に向かう方法もある。今は廃道になっているが、かって下った事のある鷲羽岳の中腹を縫うようにつけられた、三俣山荘から湯股温泉に下る伊藤新道も一般登山道ではなく、沢登をしながら歩ける混合登山道として補修が進められているようである。(トピックス:2022.1.7=伊藤新道の今昔等参照)

◎標高30位=大天井岳(2922m)【2023,5,18】

北アルプス表銀座縦走路の中核をなし、ここより常念岳方面への分岐点でもある。俗にオテンショウとも呼ばれているが正式名称はダイテンジョウである(日本山名総覧:竹内正編)ここから見る槍、穂高連峰の眺望は最高である。この山は思い出深く、5月単独での表銀座縦走の際苦労して通過、また正月友達と2人で有明のゲートから中房温泉まで、重い荷をかついで行止めの車道を12kを歩き、更に登山道を合戦小屋まで登りテントを張った。翌日、喜作新道を歩いて大天井岳に向かい、槍穂高連峰の写真を撮った。その素晴らしき絶景は一生の宝物である。又、2回目の北鎌尾根に挑戦した際、大天井ヒュッテに泊り貧乏沢~北鎌沢経由で北鎌尾根を征服した。途中尾根から転落した登山者をザイルで尾根に引き上げ、救助したことがあった。

◎標高31位=西穂高岳(2922m)【2023,5,25】

穂高連峰の中で高さでは殿を務め、最も西に位置する頂きである。ここから奥穂高岳に続く急峻な岩稜帯は途中ジャンダルム、ウマノセ等の危険な岩場もあるが登山者憧れの縦走路である。初心者以外ザイルは必要ないが、三点確保が必須である。ジャンダルムも奥穂側から見ると絶壁だが反対側からは意外と簡単に登れる。この縦走路はいろんな人とのお付き合いで数回踏破しているが、ある時遭難者救出用のヘリが墜落して岩場に引っかかっているのを目撃した。十分注意して臨みたい縦走路である。一般的に岩場は登る方が安易なので、西穂高岳からの縦走が安易の様である。昔、単独で西穂山荘を早朝に出発して、奥穂高を経由して1日で新穂高温泉まで下った事があった。

◎標高32位=白馬鑓ケ岳(2903m)【2023,6,1】

北アルプス北部にある白馬岳から杓子岳、白馬鑓ケ岳を経由して鑓温泉に下山する、白馬三山縦走コースの一角をなす。山容は三角錐の様な均整の取れた山である。縦走時、意外と危険なのが稜線から鑓温泉への下りで、ヘツリの様な登山道は注意しないと谷底に転落する。でも鑓温泉の野天風呂に浸かれば疲れは吹っ飛ぶが、湯舟が登山道の近くにあり恥ずかしい気分でもある。春、唐松岳から不帰を経由して白馬岳まで縦走しようとしたが、メンバー1人がバテテ鑓温泉に下った事がある。雪渓沿いに降りたが道を見失い、危うく危険な谷に下降するところを何とか回避できたことがあった。積雪期、雪崩を避け山小屋は撤去してしまうので目標物が無い事が原因であった。

◎標高33位=八ケ岳、赤岳(2899m)【2023,6,8】

首都圏からも近く、八ケ岳連峰の盟主である。周辺の硫黄岳や阿弥陀岳と共に一番多く通った山である。日帰りでも多くのルートがあり、また山小屋も整備されているため、縦走登山としても人気が高い。春から雪のある季節まで、いろんなグレードが楽しめる山である。印象に残っているのは正月の、穂高岳アタック訓練の為に登った12月の南稜リッジの登攀で、一般登山道の文三郎から直接赤岳頂上に至る、バリエーションルートである。急峻で支点の確保もままならず、苦労したが楽しい思い出がある。赤岳の登山は夏より雪のある季節の登山が圧倒的に多く、強力な季節風で赤岳の半分が雪煙に覆われる中、耐風姿勢で下った経験もある。

◎標高34位=笠ケ岳(2897m)【2023,6,15】

槍穂高連峰の西に蒲田川を挟んで大きく横たわる山群の中央に、孤高に聳える均整の取れた美しい山が笠ケ岳である。普通新穂高温泉から入山し、途中の鏡平小屋からは鏡池に映る槍穂高連峰のシルエットが美しい。1980年代頂上には2mを越すケルンが数基あって圧巻であったが、台風等で崩れ去ってしまい今は無く残念である。ここも私の好きな山の1つで8回程登っている。特に記憶に残っているのが、60才を過ぎて自分の体力がどの程度かを知る為、2泊3日の上記コースを一日で踏破できるか試した事があった。疲れたら山小屋があり緊急時は心配ない。新穂高を早暁に出発し、鏡平~笠ケ岳~笠新道経由でその日の内に出発地の新穂高温泉に辿り着くことが出来た。

◎標高35位=広河内岳(2895m)【2023,6,22】

南アルプス農鳥岳の南側に位置し、北岳~農鳥岳に続く白峰三山の一般縦走路から更に、南の稜線上に位置し一般登山道からは少し外れる。広河内岳を経由して更に南下する白峰南稜は、点線コースでルートファインデイングが必要であるが、途中には大籠岳や笹山があり、日本百高山を目指す登山者にとっては欠かせない縦走コースである。しかし、途中の稜線上には山小屋は無く、水場もないのでの重いテント泊装備や水が必要である。しかしあまり登山者が立ち入らないこのルートは、雄大な3000mクラスの自然が手つかずに残っており、塩見岳を中心に南アルプス中部の絶景も楽しめる。

◎標高36位=鹿島槍ケ岳(2889m)【2023,6,29】

私が愛した山の1つである。北アルプス後立山連峰の中核をなし、顕著な双耳峰が山のシンボルである。山小屋も整備されており、訪れる登山者も多い。頂上からは剱~立山連峰の眺めが抜群で登ってきた疲れを払拭してくれる。この山は私の本格的な冬山登山の出発点となった。1981年当時、所属していた山岳会で、正月の鹿島槍ケ岳に挑戦した。冬は鹿島スキー場近くの大谷原からの赤岩尾根ルートが一般的で、一日かけて途中の高千穂平のベースキャンプ地に向かった。当時は正月登山が一般的であり、休みの関係から下見登山も含め一発勝負。結局この年は天候に恵まれ、年末の下見山行も含め2回、冬の鹿島槍ケ岳の頂上を踏んだ。後年、正月を外し1月末に同ルートに挑戦したがトレールが無く、腰までラッセルが続き、2日かけても高千穂平のキャンプ地に辿り着けず敗退した苦い思い出がある。

◎標高37位=別山(2880m)【2023,7,6】

立山三山から剱岳に向かう途中、内蔵助山荘の鞍部から少し登るとの縦走路から少し外れ、半島の様に突き出した場所に別山はある。ここは立山別山とも言われ、立山連峰の北端に位置している。見晴らしは抜群で、眼前に剱岳が屏風の様に立はだかる。剱岳本峰や八峰の鋸状の岩峰が綺麗に見渡せ、素晴らしい迫力で立ち寄る登山者も多い。山容は剱岳とは対照的に、砂礫に覆われさほど危険はない。縦走路を稜線上に進むと別山乗越で、剱御前小屋である。ここは剱沢や雷鳥沢、また奥大日岳へと道は分かれ分岐点である。登山客は少なくゆっくり3000m近い稜線散歩が楽しめる。

◎標高38位=龍王岳(2872m)【2023,7,13】

室堂を起点に槍ケ岳まで続く縦走コースは、長く過酷なためダイヤモンドコースと呼ばれている。この長大なルートは縦走を楽しむ登山者の大きな目標にもなっている。立山三山からくると一ノ越で大きく鞍部に落ち込み、急坂を登り返した先に龍王岳がある。さして目立つ山ではないが結構標高が高い。この稜線は戦国時代の武将佐々成正が、富山から大町を経由して江戸の、徳川家康に会う為に雪中行軍をしたザラ峠を経て、五色ケ原に到るルートでもある。この縦走路は後立山連峰の眺めが素晴らしい。薬師岳に続く縦走路は起伏があり長く、一般的にはスゴ乗越の小屋で一泊する。その後、太郎平から黒部五郎岳を経て三俣蓮華岳で、裏銀座コースに合流し槍ケ岳に至る。

◎標高39位=旭岳(2867m)【2023,7,20】

白馬頂上宿舎から祖母谷温泉に下る縦走路からやや外れて聳えるのが旭岳である。近くには栂海新道縦走路にある百名山の朝日岳がある。知名度は朝日岳に劣るが、百高山を目指す登山者にとっては登らなくてはならない重要な山である。この周辺には何度か来ているが当時、百高山の知識も無く、改めてこの山だけの為に大雪渓を登り、1泊しての登山は効率が悪い。朝日岳から見ると白馬岳と旭岳が並んで見え、円錐形の綺麗な山である。旭岳は縦走路からは外れており、踏み跡程度の細道を辿ると頂上に達し、白馬岳の眺めが素晴らしい。更に唐松岳方面から見ると、白馬岳より山容が綺麗であり目立つ存在である。

◎標高40位=蝙蝠岳(2865m)【2023,7,27】

南アルプスで塩見岳から間ノ岳に向かう稜線から派生する尾根上に聳え、三角形をした綺麗な山容を呈している。稜線は点線ルートで蝙蝠岳より先は深い樹林帯に囲まれ、ルートが不鮮明な所もあるので注意を要する。登山道を辿ると二軒小屋に通じ、登山客は殆どおらず寂しいが、南アルプスの奥深い山中の登山も又楽しい。今は不明であるが当時、二軒小屋ではフルコースのイタリア料理を食することが魅力で、小屋に知人がいたので格安で食べられた。この時は山梨県の田代から入り、転付峠~千枚小屋~荒川三山~三伏峠~塩見岳~蝙蝠岳~二軒小屋~転付峠に戻る1人旅の長い縦走であった。

◎標高41位=空木岳(2864m)【2023,8,3】

中央アルプスで深田久弥が百名山を選ぶ時、ほぼ同所に並んで聳える南駒ケ岳との選択に困ったという。でも彼は23m程高く、ウツギという名前に惚れてこの山を選んだという。遠くから見と木曽駒ケ岳から、空木岳の稜線はあまり起伏が無いように見えるが、実際に歩いてみると結構あるアップダウンがある。特に空木岳の最後の登りが急な岩場の連続で注意を要する。空木岳の下に木曽殿山荘がある。当時泊まったら敷布団が5m近くあり、途中トイレに起きて帰ってみると自分の寝場所がなくなっていたことがあった。又空木岳から駒ヶ根高原スキー場に下る尾根は大地獄/小地獄の難所があり注意を要する。

◎標高42位=赤牛岳(2864m)【2023,8,10】

北アルプス裏銀座、水晶小屋から縦走路を外れ、百名山の水晶岳を経て更に稜線を辿ると赤茶けた砂礫に覆われた赤牛岳がある。そこからガレ尾根伝いに黒部湖に向かって下る登山道が北ア最奥の縦走路「読売新道」で3泊4日の日程である。若い頃この読売新道に憧れたが、なかなか実現できずにいた。しかし、登りたい山も「念ずれば通ず」であり、今振り返ってみると結果として、この縦走路を5回踏破している。赤牛岳からは剱~立山連峰、裏銀座稜線の山々、薬師岳を中心としたダイヤモンド縦走路の眺めが素晴らしい。特に薬師岳の大きく翼を張った雄大な山容が注目を引く。奥黒部ヒュッテから平の渡に至る登山道は暴風雨で崩れ易く、行く度に急ごしらえの階段道が尾根の上部へと移動している。

◎標高43位=真砂岳(2861m)【20238,17】

立山三山から剱岳に向かって進むと一旦大きく下って登り返した頂きが真砂岳である。頂上は何の変哲も無く砂礫である。裏銀座縦走路の野口五郎岳の近くにも同名の山があり標高も1m高いが、何故か日本百高山は、立山三山近辺のこの山を指定している。真砂岳近くより、らいちょう沢へ下る道、また内蔵助平を経て黒部川峡谷へ下の道を分ける。昔、黒部川から内蔵助平を経て剱沢へ「ハシゴ谷乗越」を経由して登った際、登山道が雨で膝までつかる川と化し、鉄砲水におびえながら登った怖かった経験がある。真砂岳の頂上から少し下ったところに内蔵助山荘があり、因縁で泊まってみたかったが、2022年9月念願を果たした。

◎標高44位=双六岳(2860m)【2023,8,24】

裏銀座縦走路の双六小屋の近くにある。三俣蓮華岳からは「巻道」「中道」「稜線」を経て双六小屋に至る登山ルートがあるが、稜線ルートのみ双六岳の頂上を踏むことが出来る。「巻道」「中道」ルートを辿ると双六岳をパスしてしまう。この辺は何回も通過したが双六岳を経由したのは半分ほどである。周辺から見ても大きな特徴のある山では無い。特に読売新道を目指す時などは体力温存の為にパスする山である。しかし黒部五郎岳の眺めは抜群である。双六小屋は裏銀座と笠ケ岳、新穂高の分岐点に当り重要であり、何度かテント泊を経験したが、水が豊富で重宝した経験がある。

◎標高45位=常念岳(2857m)【2023,8,31】

大天井岳で表銀座縦走路と別れ、常念山脈を東大天井岳、横通岳を経て南下すると孤高に聳える常念岳である。穂高連峰から見ても、安曇野から見ても三角形の綺麗な山容を有している。この山は上高地側からも登れるが、安曇野側が断然有利である。11月末まで三俣や一ノ沢迄車で入る事が可能でアプローチが大きく短縮できる。晩秋、紅葉が美しい登山口には雪は無く快適だが、次第に雪の量が増し常念岳はすっかり雪山を呈している。あまり多くのラッセルを必要とせずに登頂でき、槍や穂高連峰の雪景色を堪能できる。前常念の手前に、石室という非難小屋があり昔泊まった事があるが、後年通った時には朽ち果てて、見る影が無かった。

◎標高46位=三ノ沢岳(2846m)【2023,9,7】

中央アルプスの木曽駒ケ岳から空木岳に向かう途中、宝剣岳を過ぎて主稜線から右に分かれた稜線の奥に聳えるのが、花の山として有名な三ノ沢岳である。しかし縦走路から往復5時間以上かかる為、花好き以外の登山客は殆ど足を伸ばさない。山頂からは中央アルプスが綺麗に眺められ、頂上付近の高山植物も美しい。又冬季、降り積もった雪は植物を覆いつくし、全山白いベールに覆われ、夏期とは全く違った三角錐の素晴らしい造形美を見せてくれる。この山も、日本百高山の達成の為1泊2日の日数をかけ登った。花の季節だった為、女性登山客の姿が多く見られた。

◎標高47位=三ツ岳(2845m)【2023,9,14】

北アルプスの有名な縦走路の1つである裏銀座縦走路は、表銀座縦走路に比べ日数も3泊4日と一日長く、踏破する山々も特徴ある峰々が続く。この縦走路は最初の宿泊地である、烏帽子小屋を出ると稜線の奥に、ピーク3個が整然と並んでいるのが三ツ岳である。しかし烏帽子小屋から見ると随分の登りに映る。稜線にはお花畑が広がっており、登山道もそれを見ながらの稜線コースもある。この縦走路からの眺めが良く、西側には水晶岳~赤牛岳を経て北アルプス最奥の読売新道に続く稜線、その奥に薬師岳、東には餓鬼岳や燕岳から槍ケ岳に続く表銀座縦走路等が綺麗に見える。

◎標高48位=三俣蓮華岳(2841m)【2023,9,21】

裏銀座縦走路の中程に位置し、北アルプス中部の重要な分岐点になっており、鷲羽岳方面から縦走してくると、西に稜線を進めば黒部五郎岳に通じ、直進すると双六小屋、西鎌尾根を経て槍ケ岳だ。登る直前には三俣山荘があり、登山客の重要な宿泊場所になっている。私もこの地を6回程訪れており思い出深い。この小屋を中心に雲の平の開拓に尽力し「黒部の山賊」著者である故伊藤正一さんである。彼が中心になり開拓した鷲羽岳の中腹を通り、湯俣川沿いに湯股温泉に下る伊藤新道は、細い頼り無い登山道だが、当時としては湯股温泉に下る唯一な登山道であった。しかし大雨等により登山道が荒れ廃道になってしまったが、昔この登山道を運よく歩くことができた。その後、長い間地図上からも登山道は消えたが、伊藤さんご子息達のご努力により2023年夏に再び開通した。

◎標高49位=南駒ケ岳(2841m)【2023,9,29】

中央アルプスで空木岳と競って百名山の栄誉は逸したが、山容もどっしりしており素晴らしい山である。空木岳から縦走しても2時間半程の近さである。時間の許す方は是非足を伸ばしてみて欲しい山である。木曽駒ケ岳から望んでも両方が仲良く顔を出している。しかし今は一般的には大桑村の登山口の方から越百山とセットで登る事が多いようだ。以前この山に登った際、越百避難小屋で泊まろうとしたら、小屋は営業小屋に変化しており、止む無く越百山の頂上にテントを張った事があった。途中仙涯嶺と称する岩峰があり目を楽しませてくれる。南駒ケ岳からの中央アルプスの眺めも最高である。

◎標高50位=観音岳(鳳凰山)(2840m)【2023,10,5】

やっと鳳凰連峰の登場である。甲府側から見ると南アルプスの前衛峰の様に聳えている。鳳凰連峰で2800mを越すのは観音岳だけである。この稜線は薬師岳、観音岳、地蔵岳と連なり鳳凰三山を形成している。この山域は春夏秋冬、何回も歩いた。特に白峰三山の眺めが最高で、良く雪山の写真を撮りに行った。記憶に残っているのは、広河原に通ずる南アルプス街道の下を流れる、野呂川に注ぐ白井沢(シレイ沢=源頭は観音岳)を遡行した際だ。沢は倒木に覆われ大変だったが、更に悩まされたのが観音岳の頂上付近の詰めで、風化した花崗岩の砂が多く堆積しており、3歩進むと2歩後退みたいなズルズルの砂礫帯であり必死で頂上まで這い上がった。

◎標高51位=黒部五郎岳(2840m)【2023,10,12】

北アルプスの富山県側からの登山口である折立から登ると、稜線に太郎平小屋がある。そのまま進めば薬師沢を経て雲の平へ、左からは薬師岳を経てダイヤモンドルートが合流し、右の尾根道を辿れば黒部五郎岳を経て、槍ケ岳にと通ずるダイヤモンドルートが続く。その長大な尾根の奥に鎮座するのが黒部五郎岳である。氷河が残した広大なカールは有名で高山植物の宝庫でもある。昔、黒部源流域の赤木沢を遡行した際、イワナが沢山おり手掴み出来そうであった。又源頭は見事な高山植物が咲き誇り、道がないので「高山植物ごめんなさい」と言いながら沢尻を詰め、稜線から黒部五郎岳に登った。この日は雨に降られ稜線でビバークした。

◎標高52位=横岳(八ケ岳)(2829m)【2023,10,19】

八ケ岳、赤岳の横に位置し、荒々しい岩稜が続く山容を形成し、特に三叉峰から奥の院に続く稜線は、屏風の様に立ちはだかっているので注意して歩いて欲しい。しかしその登山道脇には本州では白馬とここでしか見られない、貴重な高山植物であるツクモグサの群落がみられる。首都圏からも近く、多くの登山客が詰めかける山域である。特に雪山としても人気がある八ケ岳連峰であるが、横岳にまで足を伸ばす人は少ない。冬の縦走にはピッケル、アイゼンを使いこなし、時にはザイルワーク、ルートファインディングが必要である。冬場の登頂は一般的に赤岳方面より硫黄岳方面から登る方が多い。

◎標高53位=祖父岳(2825m)【2023,10,26】

あまり有名ではないが、雲の平から裏銀座縦走路に抜ける際通過するピークである(下図写真参照)。雲の平は広大な高層湿原とハイマツと岩の組み合わせで、各国の名を冠した素晴らしい庭園を形作る。この山から雲の平全体絶景を見渡すことが出来る。またここを迂回して三俣山荘に続く登山道もあり、黒部川源流に触れる事が出来る。ここから見る鷲羽岳の大きな山容も見事である。昔ダイヤモンドルートから雲の平を通り、読売新道に抜けた際、三俣山荘に宿したが、鷲羽岳を登る元気が無く、黒部源流から岩苔乗越を通って水晶岳に向かったことがあった。あの黒部川の一滴で始まる、北アルプス最奥の風景は今も頭の中に焼き付いている。

◎標高54位=針ノ木岳(2821m)【2023,11,2】

日本三大雪渓の1つを眼下に持つ針ノ木岳、前述した佐々成政が富山から徳川家康に会う為、冬季行軍した峠と雪渓でもある。白馬雪渓に比べ詰めの斜面が急である。北アルプスのほぼ真ん中に位置し、剱岳をはじめ後立山連峰から槍、穂高連峰に至る、有名な峰々が四方を埋め尽くす。稜線を北に進むと赤沢岳と鳴沢岳の中間あたりを針ノ木隧道(関電トンネル)が通っている。又黒部湖の眺めも素晴らしい。昔この稜線を縦走した際、登山道脇にガンコウランの実が赤く熟しており、しゃがみこんでむさぼって食べた事があった。針ノ木小屋に一泊して蓮華岳へ足を伸ばすと楽しい。

◎標高55位=大沢岳(2819m)【2023,11,9】

ちょっと馴染みのない山名であるが、南アルプスの赤石岳から聖岳への縦走の際、稜線を形成しているが、「百間洞山の家」から見ると大沢岳は屏風の様に聳え、百高山に興味のない登山客は登頂を諦めてトラバース道を選んで聖岳に向かってしまう。しかし急な登りを経て頂上に立つと赤石岳や聖岳の眺めが素晴らしい。南アルプスの最奥にあり、百高山ハンターには過酷な登山を強いるが、これも1つの魅力かもしれない。あとで後悔をしない様に、縦走路近くにある登れる山は登っておくべきである。縦走路には中盛丸山や兎岳の日本百高山があり、三山が1日でゲットできる楽しい登山道である。

◎標高56位=兎岳(2818m)【2023,11,16】

前述の大沢岳の横に中盛丸山を挟んで聳えている。この山は南アルプスの赤石岳から聖岳に縦走するには、通過しなければならないピークである。結構大きな山塊を形成しており、聖岳からも綺麗に見える。近くに避難小屋があったが朽ち果てて、今は使うことは出来ない。ここからも赤石岳、聖岳の眺めが抜群である。聖岳に行くには、聖兎のコルを経て危険で細く長い登りの稜線が続く。これはこの稜線の右側が聖岳大崩壊地になっているためで、十分な注意が必要である。縦走路は大沢岳よりずっと南下してきたが、兎岳で西方向に向きを変えて聖岳に達する。兎岳自体は周辺から見ると山容は女性的な雰囲気を呈している。

◎標高57位=五竜岳(2814m)【2023,11,23】

北アルプス、後立山連峰の中核をなす山の1つである。五竜岳から鹿島槍ケ岳に向かう五竜キレットは、ガレ場で不帰キレットより危険だ。しかし、このキレットを越え鹿島槍ケ岳に延びる縦走路は人気がある。この山は昔から雪山登山で因縁が深く現役時代の正月、遠見尾根経由で3回挑戦したが大雪などの天候不順で敗退した苦い経験がある。当時は正月の休みしか挑戦する機会が無く、多少天気が悪くても突入し頂上を目指したのである。その後春山登山で同ルート経由で再挑戦し、念願の頂上を踏んだ。頂上に向かう雪田の上部は急で、滑落には十分な注意が必要である。

◎標高58位=東大天井岳(2814m)【2023,11,30】

表銀座縦走路を大天井岳から分かれ、常念岳に向かう稜線上にある。あまり特徴のある山ではないが、常念山脈の一角をなす。この山の稜線からは、槍~穂高連峰の雄大な景色を終日眺めながら、楽しく常念岳への稜線縦走が出来る、取っておきの登山道である。位置的には大天井岳と常念岳の中間点程である。縦走路はあまり大きなアップダウンも無く常念小屋まで絶景を楽しみながら空中散歩を楽しむことが出来る。表銀座縦走路程の人気は無いが、一度は是非歩いて欲しい稜線である。常念岳からは蝶ケ岳を経由して上高地や三俣に、常念小屋からは一ノ沢経由して安曇野に下る事も出来る。

◎標高59位=抜戸岳(2813m)【2023,12,7】

新穂高温泉から笠ケ岳を目指す場合、鏡平小屋に宿泊し弓折岳から抜戸岳を経由するルートが一般的である。笠ケ岳に比べ標高は80m程低いだけだが知名度はかなり落ちる。しかし周辺の山から見ると二山は、大きな吊り尾根を持った双耳峰の様に見え迫力がある。この頂の近くから新穂高温泉に下る笠新道が伸びる。又登山道の一部が切通になった抜戸岩があり、山名の由来を納得して通過することが出来るのが有名である。鏡平から登ってくると、秩父平から一気に標高を上げ、稜線に辿り着くと抜戸岳は近くにあり、稜線の奥には均整の取れた優雅な笠ケ岳が鎮座している。私は笠ケ岳が好きでこの稜線を8回程歩いている。

◎標高60位=杓子岳(2812m)【2023,12,14】

白馬三山の一角をなし、その平坦な山頂が特徴的である。白馬岳に登った後は杓子岳から白馬鑓ケ岳を経由して猿倉に下る縦走ルートが初心者に人気である。私が山を好きになったのは、実はこの縦走路を歩いたのが原点である。八方尾根から見ると白馬岳、杓子岳、白馬鑓ケ岳が綺麗に整列して見え白馬三山と言われている。昔、春山での単独行に目覚めた頃、猿倉から杓子岳に直接突き上げるバリエーションルートの、杓子尾根を単独で登って白馬岳まで縦走したが、最後の杓子岳の詰めがすごい急坂で苦労したことを思い出した。後は白馬岳経由で大雪渓を下ったが、思い出の残雪登山であった。

◎標高61位=中盛丸山(2807m)【2023,12,21】

あまり聞きなれない山である。南アルプスの赤石岳から聖岳への縦走路の一角を占める。この縦走路を歩くと大沢岳、中盛丸山、兎岳の日本百高山、三山を一日で制覇できる。縦走路から丸みのある山容が突出して高く見えるが、実際に登ってみると大した時間を要せず30分もあれば十分である。この山からの眺望は抜群で赤石岳、聖岳が眼前だ。南アルプスの最奥の山に登っている感じである。又、谷を隔てた反対側には登にくい山であるが、百高山制覇の為には登らざるを得ない奥茶臼岳が孤高に聳えている。稜線の縦走路は風倒木が登山道を塞ぎ、通過に難儀した山であった。

◎標高62位=阿弥陀岳(八ケ岳)(2805m)

【2023,12,28】

八ケ岳で赤岳と双璧をなすのが阿弥陀岳である。ただ一般縦走路から外れているため登山客は少ない。行者小屋から見る赤岳、阿弥陀岳の屏風の様に広がる山容は素晴らしい。またこの山はバイエーションルートである、阿弥陀南稜を有することが有名である。岩が脆いため冬季の登攀が中心であるが、雪崩の危険のあるルンゼを注意深く登攀すれば達成感のある南稜突破である。核心部のルンゼは年によって積雪量が異なり難易度が大きく変わる。この南稜は雪の多い年、少ない年の両方を経験したが、積雪があると怖いルンゼである。過去にザイルで結んだ登山者グループが滑落し、数珠つなぎで落下した事故があった。このルンゼはザイルで結ばず、自分の命は自分の命を守ろう。

◎標高63位=上河内岳(2803m)【2024,1,4】

南アルプスの茶臼岳から聖岳に向かう途中にある。二重山稜をなす高所側にあり、縦走路から登頂には15分ほどかかるが登っておきたい山である。日本二百名山であり、遠くから眺めると中々格好のいい山である。山名の由来の河内は「狭い渓谷」という意味で関西とは関係ない。この近辺高山植物が多く見られ、楽しい縦走登山を約束してくれる。南アルプスには広河内、上河内、小河内の三山があり各々百高山に指定されている。共に登ったが、上河内岳だけが一番印象に残っている。ここから眺める聖岳も絵になる絶景である。

◎標高64位=小河内岳(2802m)【2024,1,11】

塩見岳の登山口である三伏峠から赤石岳方面に延びる縦走路上にある。普通は塩見岳から間ノ岳や北岳方面への縦走者が殆どで、この登山道を歩く登山者は少ない。小河内岳の山頂付近には小河内避難小屋があり、又板屋岳の先にも高山裏避難小屋もあり万一の時安心である。私は昔、山梨県の田代から入り、転付峠~千枚岳~荒川三山~小河内岳~三伏峠~塩見岳~蝙蝠岳~二軒小屋を3泊4日で単独縦走をしたが殆ど登山客と会わなかった。しかし最後の二軒小屋に友人がいたので格安でイタリア料理のフルコースを食べる事が出来て満足であった。

◎標高65位=アサヨ峰(2799m)【2024,1,18】

この山は登り残されていた峰の一つであった。甲斐駒ケ岳へは北沢峠から良く登っているが、少し尾根を外れたアサヨ峰は登れていなかった。でも100高山に指定されているからには登らざるを得ない。途中の栗沢山までは登山道もしっかりしているが、そこから先は大きな岩が累々としており踏み跡程度しか道は無い。確かにこの早川尾根を利用する人は広河原に行く人ぐらいである。今は広河原には北沢峠からバス便もあり、マニアの縦走路であろう。でも見晴らしは最高で北岳、仙丈ケ岳、甲斐駒ケ岳が真近に眺めら、鳳凰三山も美しい。

◎標高66位=蓮華岳(2799m)【024,1,25】

針木峠を挟んで針ノ木岳の横に聳えるなだらかな女性的な山である。針ノ木小屋に一泊して両山を登る場合が多い。この山は種池山荘からの眺めが最高である。蓮華岳で是非見てもらいたいのが、コマクサである。蓮華岳の頂上を越して北葛岳方面に下る途中(通称連蓮華の大下り)の砂礫の斜面、にコマクサの大群落がみられる。岩手山にもコマクサの群落はあるが、他の高山植物と混在しておりあまり迫力がない。しかしここは砂礫とコマクサ以外には他の高山植物が無くそのピンクな花は引き立つ。しかも頭上げるとバックには槍ケ岳が聳え、絵になる風景を提供してくれる。白花もあり機会があったら是非訪ねて欲しい。

◎標高67位=薬師岳(鳳凰山)(2780m)【2024,2,1】

鳳凰三山の一角を占め、頂上は花崗岩の砂礫で覆われている。登山口までのアプローチも良く、冬も含めて鳳凰三山は良く登った。一般的には夜叉神峠より入り、青木鉱泉や御在石鉱泉に辿る登山コースが人気である。以前、広河原から南アルプス街道を少し戻って、白井沢を遡行したことがあるが、この沢の源頭が薬師岳である。前記したが頂上付近は花崗岩の砂礫に覆われており、一歩踏み出すとズルズルと崩れ、詰めるのに難渋した思い出がある。また、冬はあまり積雪が無く、鳳凰三山の稜線を歩くと野呂川を挟んで立ちはだかる北岳、間ノ岳、農鳥岳の雪に覆われた素晴らしい白峰三山の絶景が楽しめる。

◎標高68位=高嶺(2779m)【2023,2,8】

あまり聞きなれない山であるが、南アルプスの鳳凰三山の一角を占める。三山の縦走路からは少し外れているため、入山者は限られてしまう。しかし鳳凰三山から広河原峠や白鳳峠を経由して広河原に下る場合、この山を経由すするのだが特徴のある山で無いので見過ごされてしまう。また鳳凰三山からアサヨ峰や甲斐駒ケ岳に縦走する場合、この山を経由して稜線を辿るが、この稜線を早川尾根と言って知る人ぞ知る、北岳を存分に眺めながら縦走コースである。ただ入山者が少ないため登山道が他と比べ整備されておらず、注意して通行する必要がある。

◎標高69位=熊沢岳(2778m)【2024,2,15】

中央アルプスで木曽駒ケ岳から空木岳へ縦走する場合の通過する峰である。手前に檜尾尾根のピークである檜尾岳がある。あまり目立たない峰であるが空木岳の眺めが抜群である。南アルプス周辺から見ると中央アルプスは比較的平坦に見えるが、実際に歩いてみると結構なアップダウンがあり疲れる。特に終盤の木曽殿越から空木へ岳の急激な登りは精根尽き果てる為、木曽殿山荘で泊まり鋭気を養い、駒ケ根スキー場へ下る。宝剣岳から空木岳方面を眺めると空木岳、南駒ケ岳へと続く「逆くの字」を描く稜線の頂点に位置し、存在感を示している。

◎標高70位=剱御前(2777m)【2024,2,22】

この山も剱岳が余りにも有名なため、存在が薄いや山である。剱岳へは普通、室堂から剱御前小舎を経て剱沢に降りて登り返すのが一般的である。しかし剱御前へは剱御前小舎から尾根伝いに剱岳方面に向かう必要がある。この登山道はメインから外れているため歩く人は限られている。しかし剱岳の景観は抜群であり、撮影ポイントの穴場でもある。しかし私も登ってはいるものの、剱岳に視線が注ぎ、この山を捕えた写真が少ない。何に使うか分からないので、周りの風景はきちんととっておく必要がある。

◎標高71位=赤岩岳(2769m)【2024,2,29】

この山は北アルプス表銀座縦走での2日目、燕山荘から大天井岳を経て、ヒュッテ西岳に向かう喜作新道の稜線上にあり、ここまでくれば西岳ヒュッテは目と鼻の先である。大天井岳からはアップダウンを繰り返しながら250m近い下りでの縦走路である。ここから槍ケ岳の眺めは最高で右に北鎌尾根を、左に東鎌尾根を従えた尾根の奥に槍の様に鎮座し、聳え立つその鋭鋒は深く心に残る思い出の風景ではなかろうか。表銀座縦走路を踏破すると燕岳、大天井岳、赤岩岳、西岳、槍ケ岳の5つの日本百高山をゲットできる。

◎標高72位=横通岳(2767m)【2024,3,7】

この山は表銀座縦走路の大天井岳から分かれ、常念山脈を常念岳に向かって南下する稜線上にある。ここからの眺めはまさに絶品で東側の正面には槍~穂高連峰が眼前に何の障害物も無くパノラマの様に広がり、進む稜線の奥には均整のとれた三角錐の常念岳が聳える。この常念山脈の縦走路の特徴は常に槍~穂高連峰の雄姿を見ながら歩けることで他では味わえない。横通岳は縦走路から少し外れているが、是非登っておきたいピークである。この山も含め稜線上にある東大天井岳、常念岳も日本百高山である。

◎標高73位=大籠岳(2767m)【2024,3,14】

この山もあまり有名でなく「おおこもりだけ」と読む。場所は南アルプスの白峰三山の農鳥岳から奈良田温泉に下る大門沢下降点から、更の南に伸びる点線ルートの白峰南稜上にある。この縦走路はハイマツが縦走路を塞ぎハイマツ漕ぎも必要な箇所もあり、ルートをしっかりと確認しながら進む必要がある。しかもこの白根南稜を縦走する場合、山小屋や避難小屋等は無く、テント泊が必要である。この白根南稜には広河内岳、大籠岳、笹山3つの日本百高山がるが、笹山はツアーも組まれており、また広河内岳は大沢下降点から近い為容易に登れるが、この山が難題である。

◎標高74位=小蓮華岳(2766m)【2024,3,21】

栂池から白馬岳に登る途中にある峰で白馬大池から綺麗に見える山である。ここまでくれば白馬岳も近くになり、170m近い登りを残すだけとなる。裾野の白馬村から見ると大きな山塊である、白馬三山の稜線の右に存在感を示している。この山は以前2769mあったそうだが、頂上部が崩落して現在は2766mになっている。新潟県と長野県の境にあり、新潟県の最高峰でもある。頂上からは白馬三山の他、東には雪倉岳や朝日岳の姿も美しい。もう少し登り三国境から栂海新道を下り親不知に抜ける縦走路は登山道の高山植物が素晴しくお勧めコース。

◎標高75位=地蔵岳(鳳凰山)(2764m)【2024,3,28】

鳳凰三山の中では殿を務める。頂上は独特な奇岩で構成されており、オベリスクと呼ばれている。直下に「賽ノ河原」と呼ばれる場所があり「子授け地蔵」の地蔵像が並ぶ。ここから見る甲斐駒ケ岳の威厳ある姿も素晴らしい。鳳凰三山は夜叉神峠から入山し、山小屋で一泊して青木鉱泉や御座石鉱泉に下るのが一般的である。この山は冬期適度の積雪があり何度も訪れている。この稜線から見る白峰三山の眺めは格別で、特に厳冬期の北岳の眺めは迫力があり、何人をも寄せ付けないような厳しさがある。

◎標高76位=燕岳(2763m)【2024,4,4】

風化した花崗岩の山体は独特な雰囲気を醸し出している。中房温泉を出発点とした、北アルプス表銀座縦走路の初めてのピークである。近くには600人近くの収容人数を誇る燕山荘があり、シーズン中は大変混雑する。燕岳からは大天井岳、北鎌尾根や槍ケ岳の眺めも良く、これを目的にやってくる初心者もいる。また餓鬼岳や唐沢岳への登山道も通じている。この山周辺は雪のある季節が好きで、5月に単独で燕山荘から殺生小屋迄1日で歩いた時は本当に疲れた。又、正月の槍~穂高撮影山行で大天井岳まで行ったが、冬は林道が通行止めの為、12kmの道を重い荷を担いで歩いた苦しさが忘れられない。

◎標高77位=硫黄岳(八ケ岳)(2760m)【2024,4,11】

南八ケ岳のほぼ中央に位置し、有名な爆裂火口壁の縁にある。南八ケ岳を縦走する場合、赤岳鉱泉からまず硫黄岳に登り硫黄岳~横岳~赤岳~行者小屋まで1日で丁度良いコースである。硫黄岳の噴火口は当時の噴火がいかに激しかったかを物語っている。赤岳から縦走する場合、横岳の通過に当たっては奥の院~三叉峰の岩場には十分注意する必要がある。硫黄岳から北上して天狗岳や白駒の池方面に足を伸ばしても楽しい。硫黄岳付近を境にして北の山域を北八ケ岳と称し、比較的なだらかな山容を呈しており初心者向けである。それに反し南の山域は岩稜帯で縦走には注意が必要である。

◎標高78位=西岳(2758m)【2024,4,18】

北アルプス表銀座縦走路の「ヒュッテ西岳」のすぐ近くにある。しかし縦走路からは外れているため、15分ほどかけて登る必要がある。この表銀座縦走路、我々の若い頃は「燕山荘」から槍の「肩の小屋」まで1日のコースであったが、近年は「西岳ヒュッテ」で1泊するのが定着しているようである。登山者の平均年齢が上がっているので仕方ないかもしれない。ここからの北鎌尾根の鋸の様なギザギザした、稜線の眺めが素晴らしい。表銀座縦走路は西岳ヒュッテより右に折れて水俣乗越に向かうが、そのまま稜線を進むと、登山道も無くザイルが必要な急峻な尾根を下った奥には、日本百高山98位の赤沢山があるが大変な山だった。

◎標高79位=樅沢岳(2755)【2024,4,25】